映画 ルキノ・ヴィスコンティ『家族の肖像』

家族の肖像 [VHS]

家族の肖像 [VHS]

『イノセント』に触発されて、レンタルビデオ屋で借りる。

期待しすぎていたのか、正直最後までみるのがつらかった…。

『ベニスに死す』は「老い」と「同性愛」を詩的に描いたもの、

とすると『家族の肖像』は上記のことをもっと直接的に描いた作品

といえないか。


老いた「教授」(バート・ランカスター)の家の2階を借りたい、と

ある夫人が訪れる。夫人と娘、娘の婚約者、そして夫人の愛人

コンラッドヘルムート・バーガー!!)が否応なく教授の

生活に闖入してくる。

教授ははじめは彼らを否定するが、次第に彼らが言い争いをすると、

仲裁するような立場をとる。

特に教授はコンラッドに惹かれている。

彼が美しいからか(コンラッド登場シーンで、教授は彼に目を奪われる)

教授の美術史の話を理解できるからか。


ラストの教授とコンラッド、夫人、娘、娘の婚約者が食卓を囲むシーン

は美しい。

居間でコーヒーを飲みながら教授は言う。

夫人たちが闖入して、自分の生活は乱されたが、

「君たちを家族だ、と思えば」許せると。

しかし手に入ったと思った家族との至福のときは、一瞬にして終わる。

『イノセント』のオープニングでは、古い本を片手でめくるシーン

から始まる。途中血のりなのか、本のページが重なってうまく次の

ページをめくれない。 それでもあえて片手でめくろうとする。

『家族の肖像』では脈拍の計測器の記す白いレシートのような紙

が何重にも重なり、紙は延々と流れてくる。

『イノセント』で「本」は、ジュリアーナの不倫が発覚する伏線

だし、『家族の肖像』では最後まで教授は生きていたが、いずれ

訪れるだろう教授の「死」を暗示しているのだろうか。